中古屋さんの机で泣きながら書類に署名して押印しているゆきぴゅーを見てあまりに哀れに思ったのか担当の人が
「よかったらおうちまでお送りしますよ。帰りの足、無いですもんね」。
マーチくんに乗り込む時に「わたくしが運転してもよろしいですか?」と最後の最後の運転を買って出て助手席には車屋さん、
後部座席にお師匠サマが座りましたの。ご想像通り社内は暗~いムードですの。
「・・・・あのぅ、わたくしこの車のハンドルが記念に欲しいんですが」
「は?ハンドルですか?」
「ハンドルがだめなら運転席、この運転席をベランダでソファ代わりにしたいのでつぶす前にください」
「ええぇ!?ちょ、ちょっとそれは、ですね、あのう、、、」
「ダメですのね、、、(泣泣泣)」
「あ、あのですね、正直なところお教えしちゃいますとこの車はたぶん廃車にはしないんですよ」
「えっ?じゃどなたか乗って下さるですの?」
「ええ、といっても日本ではないんですが」
「がいこくですのー?マーチくんは外国にお婿に行くですのー?どこの国ですの?イタリアですの?フランスですの?イギリスですの?」
「東南アジアです」
「と、とうなんアジア・・・。」
「ええ、たぶんベトナムかタイに」
「べ、べ、べ、べ、べとなむぅぅぅぅーー!!??わたくしの故郷(心の)ですわー。ではベトナムで再会出来るかもしれないですのねー。あぁ、
なんかゆきぴゅーちょっとうれしくなってきましたわ。それではハンドル取ってる場合じゃないですわね。
マーチくん東南アジアで第二の人生を歩むですわ。頑張って、ですわー。ゆきぴゅーも頑張るですわ。いつかまたベトナムで会うですわー!」
遠ざかっていく愛車マーチくんの後ろ姿を見ながら悲しいかうれしいからかわかりませんが涙が後から後から出てきて止まりませんでした。
夜は久々にお師匠サマと居酒屋に行ってお酒を飲みましたの。
「ゆきぴゅー、いつか会社が儲かって新しい車を買うときがきて、
それがかっちょいいオープンカーだったとしてもマーチくんって名前つけていいからね。マーチくんってシールも貼ってもいいぞ。」
いつになくやさしいお師匠サマだったのでした。
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