札幌駅5番ホームに行くと、いくつか列ができていてドキドキ!でも発車案内板を見ると、どうやらそれは普通列車を待っている人たちのようです。さすがに発車2時間前から並んでいる人はいないのかしらー?!と足早に『はまなす』の自由席車両の停まる位置まで行くと、やっぱり列ができていました。並んでいたのは7、8人というところでしょうか。わたくしは一番後ろで一人で立っていた30代くらいのメガネの男性の隣にすっと並んで、キョロキョロと辺りを見回してから、
「あのぅ、これってはまなすの自由席の列ですわよね?」
「そう、だと思います。ボクも今、来たところで、、、ここでいいんですよね?!」
「ですよね?」
すると前に並んでいたご夫婦がくるっと振り向いて教えてくださいました。
「そうです、これが自由席の列ですよ」
(ホッ!)
内山先生との最後の晩餐を途中で抜け出してきてよかったですわ~!っていうか、いったい先頭の人はどのくらい前から並んでいるですの~?!
隣のお兄さんとはお互い一人ということもあって、寒さの中いろいろとお話して過ごしました。
「座れると思いますか?」
「大丈夫じゃないですの?わたくしたちの前はこの人数だし、ここが始発だし、、、」
「そう願いたいですね。あの、もし座れたら隣同士になりませんか?トイレ行くときとか荷物見ていて欲しいので」
「いいですわよ!」
旅の友が出来て絶望の淵から少し這い上がったような気がしましたの。30分が経ち、1時間が経ちました。それでも発車案内板には『はまなす』のはの字も出て来ません。寒さもピークになってきたので、動物園で履いていたゴアテックスの防風ズボンをジーンズの上から履いてしのぎました。
発車まであと1時間という頃、後ろを見ると列がだいぶ長くなってきました。たしかみどりの窓口のおじさんは、『はまなす』の入線は9時40分頃って言っていたような、、、。ということはあと30分くらいで列車が到着するってことですわ!車内に入れるってことですわ!
ついに21:45、『はまなす』が5番線に入線ですの。青いこの列車がわたくしたちを青森まで運んでくれるですのねー。入り口付近に列が進み、ドアが開きました。無言で押し寄せるその人の波は、実に日本人らしく規律正しいものでした。この時はしみじみとあぁ日本人でよかったと思いましたわ。どっかの国だったらこうはいかないはず。無事に席が取れてメガネのお兄さんはゆきぴゅーの荷物を網棚に上げ、窓側の席を譲ってくれました。ようやく腰をおろした時の安堵感といったらありませんの。2時間並んだかいがありましたわー!
「よかったですわね、無事に座れて」
「本当に。あとはここにご老人や子どもが立たないことを祈るのみです」
「あああ、、、、でっ、でも、こんな日の夜行急行の自由席にはそんなお年寄りとか小さい子どもは乗らないですわよ、だいじょうぶですわ、きっと」
「だといいんですが、、、」
と、その時ですの。後ろからゆきぴゅーの肩をたたく人がいるではありませんか。だ、だれですのー?!苦労してとった席、誰にも譲らないですわよー!と振り向くと、そこにはたしかにお年寄りが、、、、えっ?お年寄り?!
「内山先生!?どどど、どうしたんですのー?!」
「ほら、差し入れ。腹減ったら食べなさい」
なんとまぁびっくりですの!じゃがいもバタークッキーを持って見送りに来て下さったんですの。発車まで10分くらいあったのでメガネのお兄さんにさっそく荷物をお願いして列車の外に出ました。
「感激ですわ~!先生!寒い中ありがとうございます」
「こんな夜行列車を見送るなんて昔の恋愛映画みたいなこと今じゃなかなかないから楽しいなと思ってさ」
「たしかにそうですわよねー。まさかわたくしもこんな形で先生に見送られることになろうとは、、、」
「実はわたしも明日の昼間の汽車で帰ることにしたんだよ」
「えっ~?!本当ですの?!」
「家内に“ゆきぴゅーが今晩先に帰るんだ”って電話したら、こんな機会だからあなたも汽車で帰ってきたら?っていうからさ。さっき切符買ってきたよ」
「そうなんですか!?」
「東京まで全席グリーン車で」
ぐぐぐ、、、さ、さすが先生!次の日の朝10時半くらいに札幌を出発して夜の7時半くらいに東京駅という長旅とのこと。今朝ホテルを出る頃はまったく想像もしていなかった展開になってしまいました。でもこんなことがあるから人生楽しいというもの!
「じゃ気をつけて帰るんだよ」
「ハイ!差し入れありがとうございました。先生も明日気をつけて」
「そういえば隣の男、感じのいい人だったじゃないか」
「そんなところまでよく見てますわねー、先生(笑)ホームで並んでいる時から隣同士励まし合っていたんですのよ」
その日『急行はまなす』は約15分遅れで青森に向けて発車しました。ガタンゴトン。
つづく
コメント
コメント一覧 (1件)
なんだか、「北海道・旭川動物園撮影お手伝い旅」が大雪の為に思い出に残る
体験が出来て良かったね~(笑)
読んでいるだけで、ハラハラドキドキして疲れてしまいましたわ・・。